2015.12.29 (Tue)
■ [音楽] メシオケアフター
以前の日記でも宣伝しましたが、FF10の楽曲を演奏するオーケストラ、Meteor Symphony Orchestraことメシオケのコンサートが12/27(日)に行われました。所沢のホールという都心から少々離れた場所だったにも関わらず1000人近い方が聴きに来られたようでした。
リスナーの方、そして関わったすべての方々、本当にありがとうございました!
演奏会全部終わった後はホント↓な感じだった。
#メシオケ のみなさんお疲れさまでした! 客席の編曲者パートも終わったあとにぐったりするレベルで緊張してましたが、終わって本当にいい演奏会だったなーと! ここに関われて良かったです。そして聴きに来てくださった方々ありがとうございました!
— だいじん☆メシオケ乙カレー (@daijin) 2015, 12月 27
招待客席に偉そうに座って拝聴させてもらいました。
今回、パンフにライナーノーツとして色々書かせてもらいましたが、我々編曲っていうのは完全に裏方なのでそうそう曲について語るシーンも少なく、コメントを直接書かせてもらえたのは幸運だったなーと思いました。そういえばこれまでいくつかの楽団に関わらさせてもらったけど、自分でコメントを書いたのは初めてなような……?*1
あの楽曲コメント、実は自分は2案出してたりしました。最初は普段のTwitterみたいなおちゃらけた感じの内容だったのですが、まあ流石にパンフに載せるのにそれはないよなって自分でもちょっと思ってたので、真面目版を載せたっていう経緯があります。そりゃそーだ。最初書いたとき飲み会帰りで酒が入ってたのもいけない。そんなこんなでパンフに載せさせて貰ったのはどこが聞き所ですよ的な内容でした。
さて、この日記ではパンフと同じ事を書いても面白くないので、アフターな内容でも書いてみます。
「スピラの情景」について。
最初に出来上がった曲です。以前からTAMさんとのコラボでアレンジしていたりするのもありますし、さほど難産でもなかったです。まあ流石にオケなので、コラボしたアレンジほどには大胆にアレンジしていません。
とはいえやはり元がアコギで演奏する曲なので、最後まで表現には悩みました。実は選曲当時の案としては*2、ドラクエの「Love song探して」(ふっかつのじゅもんを入力するシーンのBGM)のような、ピチカート中心のアレンジをしようと思ってました。ピチカート自体はやはり奏法としてもアコギとそっくしなので音的にも似るかなと。ただ、ピチカートだと音量が小さいという問題がつきまとうのと、所沢のホール特性である「弦があまり聞こえない」というのがあり、それで良いものかと悩んでました。
悩んでいるときに、そういえばSuiくんの「ビサイド島」からのattacca*3だったし、そっちはどんな雰囲気かなーと聞かせて貰ったら、結構大胆にアレンジしていて、かつ弦を中心とした軽快なアレンジで「おおっ」となりました。「ビサイド島」の話はSuiくんのブログ記事をどうぞ。それを聞いて、そこからの連続演奏なんだから雰囲気も踏襲しよう! と思い立って、今回のようなアレンジに落ち着きました。随所でティンパニやピアノが妙に主張する感じなのも雰囲気を合わせてみた結果です。
弦を中心として、盛り上がるところは盛り上がるように管楽器も合流して。でも本来の原曲が持つ、アコギの素朴さはなくさないにって感じですね。あんまり派手にすると「素敵だね」になってしまうので。そこが一番気をつかいましたかね。元がアコギ曲とはいえフルオケなんだからフルオケでしかできないことをやろう! とは思うものの、ポルト・キーリカらしさをなくしてしまっては元も子もないですしね。実際演奏して頂いた奏者の方々に好評だったので、有り難い限りです。
「シーモアバトル」。
担当者が最初決まらなかったのですが、懇親会で背中を押されてこの曲も担当することになりました。今思えば、いつかはやってみたいなーと思っていた曲の一つでもあったので、渡りに船ではありました。アレンジしてみるとこれでもかってくらいに植松節なバトル曲で、編曲しながら庭オケやプリ響を思い出したりしたものです。
ですがまあ、難曲ですよね、ええ! そもそもが植松曲らしいロックとプログレの混ぜ合わせみたいな曲なので、それをオケにするってなるとまあ全部分解してイチから再構築しないといけないわけで。曲の雰囲気としてはそう難しいわけでもないストレートな感じなのが幸いで、どこをどの楽器にメロディやらせるかーとかが決まったら後は早かったですね。
原曲冒頭の印象的なシンバルジャーンジャーンなところは流石にクラッシュシンバル一本でやるとうるさすぎるし雰囲気ぶちこわしなのでサスペンデッドシンバルと交互に鳴らしたりとか、サビではやっぱりコーラス重ねたいよねってなってだいぶ豪華な雰囲気にさせてもらったりと、遊び心はふんだんに盛り込んだつもりです。ただ、その分のしわ寄せが木管・シロフォン・ハープあたりに行ってしまったのが申し訳ないのですが。元々がオルガンだったりするメロディは、どうにも分解が難しいですねえ……。結果としてはシロフォンと金管*4の攻撃的な感じが良い具合にオケアレンジバトルらしさを醸し出してくれて良かったです。
来場者アンケートを少し読ませて頂きましたが、シーモアは割と好評だったので本当に胸をなで下ろしました。オーケストラらしさは味わってもらえたかなーと思います。
そして「召喚獣バトル」。
奏者の方々には本当にご迷惑をお掛けしました……。最後まで何度も改訂してしまい、また改訂してもしても難曲譜面であることはあまり変わらず。結果としては練習の機会が減ってしまって本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ただ、それでも個人的な感想を言わせてもらうと、当日のリハでこの曲の最後のキメを聴いたときに「あ、これは勝った」って心の中でガッツポーズを決めていました。だって、あんな大迫力の音がホール全体へ響き渡ったのを聴いたらそう思うしかなかったです。
FF10の世界では、召喚獣たちってある意味での信仰の対象だったり象徴だったりで、畏敬の念を抱くべき存在で。実際ゲーム中でのバトル自体は常時リレイズがかかった状態のオマケ戦闘みたいな感じなんですが、それでもゲームをちょっと離れてオーケストラになったときには、やっぱその存在感を大きく見せたいなと思うというか。原曲がただでさえ壮大で、それを本当に再現しきれるかは、不安でしかなかったんですよね。原曲にはないコーラスを突っ込んで助けを得たとはいえ、やはり先に書いたホール特性があってどこまで見せられるかは最後まで息をのんでいました。
でも演奏会本番で、ホール全体がこの曲の音でがっつり包まれて四方から音が迫ってくるような感じになっていて。そりゃもう安堵を越えて「メシオケのみんなすげー!」としか思えませんでした。これがオーケストラというものか、と。
プリ響といい、ここ最近編曲参加させて貰う作品はなるべく奏者として乗らないようにしていたりします。それは何よりも自分が「自分でアレンジした曲や他の曲を客席で聴きたい!」からだったりする次第です。自分はどっちかというと演奏するよりも聴く方が好きな人間なので、こういう企画オケは純粋に客席で聴きたいんですよね。なので毎回ゲスト席で聴かせてもらえるのは本当に嬉しいし、その特権は今後も使わせてもらいたいなあと思ったり。本当に、今回の演奏会を客席から聴けたのは最高の体験でした。
あ、この曲を当日聴いたときに個人的に一番凄いって思ったのはタンバリンです。譜面にないキメを入れてくれていたのが印象的で、アレいいな! って心の底から思いました。あと、このアレンジの真の主役は、バスドラとシンバルっていう設定でした実は。最高に大活躍して頂いたので聴いていてスカッとしました。もちろん他の楽器にもこだわりポイントは色々あったのですが、一番はそこでした。あとあと、雰囲気作りとしてグラブルの星晶獣戦BGMである「大星晶獣との戦い」を参考にしたりしたんですが、まあ跡形もなかったですね*5。ハイ。
なんか書いたらめっちゃ長文になりましたが、そんな3曲を編曲担当させていただきました。
特に、ここまでがっつりとした王道なバトル曲のフルオケアレンジをさせて頂いたのは初めて*6で、加えてコーラスをこんなにふんだんに取り入れたのも初めて*7で、いやもう大変に大変を重ねた奏者負担MAXで奏者の力量と成長具合に頼りっぱなしなアレンジになってしまったのですが、でもしっかりやり遂げてくれる奏者の方々は本当に凄いし、それ以上のフィードバックが返ってくるので、演奏会本番は手に汗握るというより背中に汗びっしょりな感じの最高の演奏だったと思います。それはまあ、自分の口から言うまでもなく、Twitterや来場者アンケートが十分にそれを物語っているとは思いますけども。それでも凄かった、と言う言葉を伝えられずには居られません。
奏者の方々、合唱の方々、指揮の後藤さん、団長のめっしー、運営の方々、会場スタッフの方々、編曲仲間のみなさん、そして来場頂いたみなさんに感謝という感じです。
めっしーの泣いてる姿みて、いろいろ迷惑かけたけど参加させてもらえてよかったって思った。どのオケで編曲参加してもそうだけど、お客さんや奏者より何より、ダンチョーさんを一番満足させたいからなあ……。ホルンにややメロが多めだったのはそういう意図もあったり。
— だいじん☆メシオケ乙カレー (@daijin) 2015, 12月 27
ありがとうございました。そしてお疲れさまでした!
*1 同人CDのゲスト参加とかだと良くあるんだけど、オケだと団員の方が紹介文を書いたり、そもそも楽曲コメントがなかったりと、色々なイメージ。このあたりはアマチュア企画オケらしいところですね。
*2 確か選曲会議のときに自分がやりたいって提案した曲だったはず。
*3 前の曲から休みなく連続で弾くこと。休みなくっていうのは、要は指揮者がタクトを下ろさずにそのまま次の曲へってことなので、実質的にはメドレーみたいな位置づけです。
*4 どうにもこの手の企画オケのバトル曲って「吹奏楽+弦」みたいな雰囲気になりがちなのがアレなんですが……でもまあ聴き手の感覚としては、やっぱそういうアレンジだとウオオオってテンション上がるし!? 的な。ええ、そういうアレンジ大好きなので。ええ。
*5 これをイメージしたサスペンデッドシンバルの譜面が実はあります。ただ実際、どう考えてもサスペンデッドシンバルが2台必要になるし奏者ももう一人必要になるしで、今回の演奏ではカットしていただいた感じでした。まあね、自分でも無茶ぶりなトラックだと思ってましたからね、ええ。
*6 庭オケで「Premonition」をやってますけどアレは自分の中でバトル曲ってイメージじゃないんですよね何故か……。
*7 プリ響のときにオリジナルの歌詞を書いてがっつりやりましたが、アレが実は逆に自分の中のハードルをめちゃくちゃ上げていました。