Zephyr Cradle Diary


2021.04.06 (Tue)

[Game] 「ウマ娘」に出会ってしまった記録

2月末。発表から数年経ってた「ウマ娘」のソシャゲがようやく配信開始して賑わっていたのを見て、あーまたなんか新しいソシャゲが出たかーくらいにしか見てなかった。

すでにFGOとかグラブルとかロマサガRSとかプリコネとかアナデンとかのソシャゲをやってるし、FF14やDQXなんかのネトゲもやってるしで、まあプレイする時間は取れないだろうし。それに競走馬なんて全然知識もなくて、なんかディープインパクトだとかハルウララだとかってのが世間を賑わせていたことがあったようななかったようなくらいのものだし、まあ自分には無縁だろうとスルーしていた。アニメも全く観ていなかったし。

きっかけは、本当に些細なものだった。

自分はゲームするとき、女主人公と女の子キャラがキャッキャウフフするのを眺めるのが好きなのだけれど、女主人公を選べるゲームはそこそこ数が少ないうえに今流行りのゲームでそれを実装しているとは珍しい。しょうがねえそれを聞いたらやるしかないか、と思って重い腰を上げた。

自分の中にあった競馬の記憶というと、小さい頃から時々、父がTVで中継を観ていたような記憶がある。

日曜の昼間に観る番組もないから垂れ流していたとかその程度のものなのだろうけども(父の口から競馬の話題が出た記憶はない)、とはいえ、なんか馬が一斉にゲートから飛び出して縦並びになって走って行く映像がうっすらと頭の片隅に残っていたりはする。まれにTVで流れていたマラソンやら駅伝やらの中継を観た記憶が残っているのも同じで、まあ休日のBGM程度の認識しかなかった。

ゲームとして見たウマ娘は、実に良く出来ている。

競馬について先に挙げた程度の認識しかない自分でも、ゲームを始めてすぐのチュートリアルでこのゲームにおける原作愛というかリスペクトを「理解って」しまった。レースのカメラワークと実況だ。薄ぼんやりとした記憶でも分かる、TVで観たあの競馬中継のそれを実によく再現していた。それほどまでに強烈なリスペクトで、思いっきり頭を殴られた気分だった。

育成のシステムも、昨年始めたシャニマスが近く(パワプロと表現するのが一番近いらしいが未経験なので分からない)、因子とかいう継承システムも良く出来ている。ソシャゲと言えば基本は周回ゲームだけど、そこにトライアンドエラーを何度も繰り返させる要素を入れていくのはなるほど確かに面白いなと思った。ランダム要素は多いけれどある程度はプレイヤーがハンドリング出来るようになっているので試行錯誤のしがいもある。まあ、このあたりの詳しい話は他所の記事が分かりやすく語ってるので割愛するとして。

3年間の育成の中で語られる、ウマ娘ごとの個別ストーリーとキャラストーリー。これが凄かった。

「キャラストーリー」でトレーナー(プレイヤー)との出逢いの物語を描き、育成中のストーリーで3年間の物語を語る。これが実に良く出来ている。文法が一昔前のギャルゲー・エロゲーのノリなのだ。ヒロインと出会い、ふれあい、互いに成長し合うあの感じ。カウンセリングと言われることもあるけどそこはそれ、良く読み慣れた文章のスタイルなので本当にサクッと没入できてしまった。特にアグネスタキオンのストーリーは完璧がすぎる。あの話の構成は完全にギャルゲー・エロゲーだよ。

それをよくもこんな令和にもなって持ってきたな、というかライター陣は一体なんなんだこれは、と震えた。しかもだ、育成中に勝てたレース・勝てなかったレースによって細かな分岐(セリフの変化)がある。どこまで拘って作られているんだよと感じ入らずには居られなかった。レースの着順によっても微妙な差異が生まれたりもするので、プレイの数だけ物語が生まれてしまう。

ストーリーをある程度読んだ範囲で、推しはキングヘイローとアグネスタキオン、トウカイテイオーかなー(推しの順序もこの順)と思っていた。この順で個人的にはお話が好きだしキャラも好きだし顔も好きだし声も好きだしという感じで。

……そこまでは良かった。

そこまでで、終われば良かった。

育成を何度もプレイしたりTwitterを見ていたりしたら、否が応でも気付いてしまうというか意識させられてしまった。「育成中、ウマ娘ごとにいくつか目標設定がされているレース」。これらはおそらく「元になった競走馬に関係するレース」なのだろうと。

まだ自分から積極的に調べては居なかったのだけれども(自分から調べにいく勇気がなかった)、TwitterのRTで流れてくる断片的なエピソードやイラストを見ていれば、察しが付いてしまう。メインストーリーで登場する子たちや、特にライスシャワーとか。妙に絡みが多い子達は実際に親子だったり兄弟だったりなんだなとかって情報も少しずつ入ってきた。

ターニングポイントが、あった。

そこまで「なかなかテイオーで三冠取れないなームズカシイなー毎回泣かせたくないんだけどなー」とか「なんか毎回ダービーの後に怪我をするイベントが挟まるなあ、まあ史実でもこの頃になんかあったのだろうなー」などと、まあ今にして思えば単にゲーマーとして推しを応援したいだけの気持ちで思っていたのだが、そんな気持ちをここで打ち砕かれてしまった。喩えるなら、関ヶ原の戦いで敗れることを知らずに石田三成を推していた、みたいな感じ(良い喩えか?)。

別にこれが悪かったなんて思わないし、浅はかだったとも思わない。むしろ自分は幸運だったと思う。

このウマ娘というゲームを通じてトウカイテイオーというものに、やっと出会うことが出来たのだから。

その後、現在放送中(今年3月に終わった)のウマ娘アニメ2期の主役がテイオーだと知るまでにそう時間はかからなかった。サブスクどころかネット経由でアニメを観るなど、人生において一度もしたことがなかった自分が、dアニメ契約して。3/25、2期の1話だけ観た。しかし、ダメだった。これ以降を観るのは片手間ではいけない、しっかりと時間を作って観なければいけない、と察してしまった。

そうして4/2夜に、一気に全話を観た。

泣くしかできなかった。それ以外に出来なかった。何も考えられなかった。今ここに文字にすることも出来ない。ただただ、これを観て、涙を流すだけだった。観終わった頃には朝5時だった。

翌日、史実の有馬の動画も観てしまった。また泣いてしまった。

順序は逆になってしまったがアニメ1期も全話観た。ここ数日仕事中に聴いてる曲はウマ娘のCDばかりだし、2期のBlu-rayは全巻予約した。そのあと2期全話をもう1周全部観た。

今ここに書けることはとにかく、ウマ娘というものに出会えて、そして競走馬というものを知るきっかけを得ることが出来て、本当に良かったということに尽きる。

今までの人生で掠っていただけの世界、そこに対する興味と解像度を一気に上げてくれたのは本当に有り難くて。このウマ娘という存在そのものが、それこそ自分に「夢を与えてくれた存在」であると言い切ってしまえる程度には、自分には影響度がとても大きな存在だった。こんな歳にもなったのにこれほど泣いて、夢をもらって、そして勇気を貰った。ありがとう、ひたすらに感謝しかない。

この先もウマ娘というコンテンツは続くだろうし、ゲームもまあサ終するまではそこそこに続くのだろう。昨今は隆盛が激しいとは言え、そこそこに社会現象になっているようにも見えるので、数年は続くのじゃないかなと感じる。その間に自分はまた、新たなウマ娘や競走馬の物語に触れるきっかけを得られるのだろうと思う。

きっかけは所詮ゲームだ。しかも射幸心を煽ることで有名なガチャゲーだ。でもそこで、自分は大きなモノに出会えた。これほどに、自分がゲーマーで良かったと感謝したことはないかもしれない。

ウマ娘も競走馬も、その物語や歴史はきっとこれからも紡がれていくのだろうと思う。遅咲きのにわかではあるが、自分はそれをちょっとずつでも良いので触れていけると良いなと思う。