Zephyr Cradle Diary


2022.03.09 (Wed)

[Game] ヘブンバーンズレッド(ネタバレなし)

Keyの新作スマホゲーム! ということでリリース開始日からずっと遊んでいる。現在3章Day18まで進めたところ。 →(3/14追記)無事3章クリアできました。

https://heaven-burns-red.com/

こう、Keyのテキストを浴びていると、やはりここでしか得られない栄養素があると再認識させられるのだよなあ。しかし現状ちょいとレベル上げが必要そうなので、区切りが悪いものの、一旦ここまでで日記を書いておく。

本作はスマホゲーム、と言っても基本はソロゲー。現時点においてマルチ要素は一切ない。フレンド機能もない。同じ開発元のアナザーエデンと同じような感じで、キャラ加入部分だけガチャになっているRPGという感じ。

突如現れたキャンサーという怪物によって人類滅亡の危機に瀕しており、そんな中でキャンサー討伐に招集された主人公・月歌(るか)とその仲間たちの物語……まあ詳しくは公式サイトに譲るとして。

ゲームの流れとしてはビジュアルノベルゲーとRPGを足したような感じ。1日ごとにイベント+自由時間が発生していく、ペルソナに似たような流れ。自由時間には仲間と交流(キャラクエ)をしたり、主人公のシックスセンス(交流を受けるための前提ステ)を上げたり、アリーナ(フリーバトル)で強化素材を集めたりする。

リリース時点で2章まで実装され、2週間ほど経って新章である3章が公開されている。1章は数日でクリアしたものの、2章・3章はなかなかのボリュームがあるので、据え置きゲーと同様にまったりとプレイするのが良さそうだなーと感じているところ。

とにもかくにも、最初に読むプロローグがこのゲームのノリの8割くらいを説明している。このKey特有のテキストのテンポとノリに付いていけるかどうかで最初のふるい落としがされる。Keyに育てられた自分にはもちろん最高だったわけだ。リトバスとRewriteの中間くらいの作風だろうか。

なので、まずは軽率にインストールして、軽率にプロローグを読んでみて欲しい。

しかし昨今のスマホゲ・ソシャゲに慣れ親しみすぎて舐めていたのだが、本気のフルボイスなのが凄い。

選択肢の分岐後もフルボイスが続くし、なんなら選択肢自体も全部読み上げてくる。珍妙な選択肢を選んでも読み上げられる。上のスクショで言えば3×3=9通りの選択肢なんだけど全部ボイス付きで読む。

他にも、随分と後になって前の選択肢を拾ってきたりもして(もちろんフルボイス)、フラグ管理どうなってんだってよりも、このフラグ分岐ごとの細かいセリフの変化も全部ボイス収録したのかよってほうにビビってしまう。今時こんなの普通の据え置きゲームでもそこまでせんわ。

このあたりのこだわりはKeyのゲームなんだなあと思い知らされてしまった。そうだよビジュアルノベルってのは本当に全部フルボイスなんだよ、ってなってしまった。

他にも凄いなと思ったのが、キャラの登場に最初から出し惜しみがない。

いやあ、この手のソシャゲやネトゲって、アプデでストーリーが追加配信されていくもので、新章追加=新キャラ追加みたいなイメージがあった。イラストやボイスの発注スケジュールなんかもそういうほうが色々便利なんだろうな……と、まあ勝手にそう思っていたところがあった。

ヘブバンもご多分に漏れずストーリーが後から追加配信されていくスタイルっぽいのだが、配信開始時点で公式サイトに発表されている登場人物51人(プレイアブルは48人)、リリース時点の2章までですでに全員登場するし仲間にもなるし、最初から立ち絵もセリフもフルボイスで全部ついてる。全員のキャラストも揃ってる。どんだけだ。

既にテキストはほぼ完成して出揃ってるってことなのか……? と思わされるくらいに、開発スケジュールが謎。凄い。

ボーカル曲もふんだんに使われていて、やっぱボス戦でボーカル曲かかっちゃうと最高にテンションが上がるんだよなあ!! と思ってしまうゲーム脳。そういう演出好きでしょと言われたら大好きですと返すしかない。理解られている。

キャラクターも個性豊か。主人公属する31A(さんいちえー)部隊がまあいわゆる親友組みたいな感じで。主人公含めて全員女子なわけだけど、やってることは女子会というよりも男子会。だいたい月歌とユッキーがじゃれ合ってる。ユッキーのツッコミが本当に小気味よいのだわ。

そんなので、ストーリーの9割くらいはギャグパートみたいなものなんだけども、残りの1割でしっかりとシリアスに落としてくる。それもエグい角度で。そうだよなこれがKeyだ、これを読みたかったんだ……ってなる。

バトルについては、いわゆるロール的なものが各キャラに設定されている。それに加えてキャラごとの攻撃属性(アナデンと同じ斬・打・突)が組み合わさって、バトルでの個性が用意されてる。とはいえモブ戦も多いので1属性で固めるよりは汎用的に色々出来るパーティーのほうが便利な感じではある。

ダンジョンでは装備のドロップを掘ったり素材クエを周回したりと、なんとなくソシャゲっぽい要素も垣間見えるので、バトルもそこそこに楽しもうと思えば楽しめる。まあ数回もやればダルくなってくるので、1日にずっと張り付いてプレイする感じのゲームではないのだけれども。

それとストーリーでちょいちょい出てくる地名に神奈川や長野あたりが多くて、ちょっとにやりとしてしまう。あと妙に登山っぽい話も多い。ちなみに2章の攻略中に失敗すると町田が滅ぶ。

ともあれ、Keyのテキストに、イラスト・ボイス・音楽という圧倒的なリソース量で攻めてくるゲーム、贅沢が過ぎるとしか言えない。ありがとうKey……やはりだーまえはアニメの尺や表現には向かなかったね……これが求めていたものなんだよ……という想いで溢れてしまった。

が、しかし……。

ここまで挙げたような素材というか、いわゆる「ガワ」の部分は大変良く出来ていると思う一方で、どうにもRPG部分や運営部分にかなりのアラが見えるのが、何とも勿体ないと感じる。

とにもかくにも、バトルのバランスがビジュアルノベルのそれじゃない。

いやまあ、確かにこのゲームはビジュアルノベルではない。ないのだが、Keyっぽさを全面に押し出して宣伝していて、キャッチコピーも「最上の、切なさを。」とか謳っていて、さもストーリーをたっぷり楽しんでくれ感を出しているのだが、それにしてはちょいと、バトルの難易度が高すぎる。

  • ストーリー中のボスが割と普通に容赦なくめっちゃ強い
  • レベル上げをしろということだろうが、レベル上げをしようと思っても入手経験値の量が全体的に少ない
  • 経験値の書的なものはあるが高額なうえ、レベルが上がるほど必要経験値量が加速度的に増えるので全く足しにならない
  • レベルを上げたところで、キャラのレアリティごとの能力差が激しい(アプデで多少改善されたが絶対的な差は埋まらない)うえに、SSキャラ未満はすぐ成長限界が来てしまう(追記:再度のアプデである程度は解消された)
  • 特定のSSキャラのみが持つ特殊属性を弱点とするボスがストーリー中に出てくる(3章)
  • 戦闘にコンティニューの類が一切ない。逃げるはあるが逃げると強制敗北になる
  • フレンド機能がないので当然フレンドサポートもない

などと、戦闘に関するバランスがおかしい。

これはもちろん、SSキャラの絶対的優位性を身をもって味わわせることで課金欲をそそるという、商売的にはまあ間違っていないのだろう。自分もそこそこ課金してガチャを回して「さらば諭吉!」した(まあ普通に31A全員のSSが欲しかったからだが)。また裏を返せば、しっかりとレベル上げやパーティー編成をしてボスバトルをするという濃厚な戦闘体験が楽しめるとも言える。

しかし……そんなにピーキーなゲームデザインにしてしまって、このゲームが打ち出したい「最上の、切なさを。」というキャッチコピーが伝えられるのか……? というのが疑問に残る。そりゃあ敵に勝てない切なさはたっぷりと味わわされるけども。

かのFF14でも、エンドコンテンツ(高難易度コンテンツ)にストーリーを入れるなとか、ストーリーを入れるなら低難易度版を用意しろとか言われて改善をしてきた歴史があるが、だいたい世の中のゲームはそういう感じでメインストーリーは低難易度になっており、高難易度は別コンテンツに棲み分けられているものが多い印象がある(自分の観測範囲では)。

ヘブバンのバランスはなんとも、イマドキじゃない。あまりにもガチャへの誘導に寄りすぎている……と思うのだ。

またそれに加えて、CMの打ち方が恐ろしく不安にさせられる。

TVCMやファイナルトレーラーとして出されたPVたちに含まれている映像部分が、未プレイであっても2章のオチが読めてしまうようなネタバレ全開な内容になっている(これからプレイしようと思ってる人は見ないほうがいいです)。また昨日から始まった期間限定イベントでも、ゲームログイン時に強制再生されるイベント導入の会話シーンが2章ラストの壮大なオチから始まる。2章をクリアしていないユーザーにも再生されるらしく、絶賛プレイ中でまだ2章を攻略中のユーザーの心境は、推して知るべしというやつだ(これからプレイしようと思ってる人は即座にスキップしてください)。(追記:その後解消されました)

この辺りの動きを見ていると、どうにもこのゲームで一体何を伝えて行きたいのかが分からない。

ネタバレを含む広告をガシガシと打つことで引き込んだユーザーたちでも得られる切なさがこの先にある……と解釈するのはポジティブが過ぎると思う。それでも付いてきたいユーザーだけが付いてこいというのは、Keyのテキストを人質に強請られているような気分にすらさせられる。

※更に言えば現在の期間限定イベントは2章の別視点を補完するストーリーなのだが、これを読んだか読んでないかで2章の印象がガラッと変わる。これを期間限定(=あとから始めた人は読めない)にしたという点においても、このゲームが訴えたい部分というのがまるで読み取れない。(追記:これもアーカイブ機能導入により解消されました)

ゲームのガワとしての十分すぎる質量に反して、「最上の、切なさを。」というキャッチコピーが空転しているようにしか見えない。……というのが現時点での感想になる。

素材は本当に良いものが揃っていて、F2Pで遊べるKeyのゲームなんて本当にありがたみしかないのだが、しかし料理人がその素材をぞんざいに扱っているようにも思えてしまい、今後どう運営されていくのか次第だなあ……と不安にもなっている。

でもまあ、ゲームのバランスや広告の打ち方なんてのは改善しようと思えば出来る部分だ。

例えばストーリーがハナから微妙だったりしても、その後のアップデートでストーリーが変更されました、なんてゲームはこれまで見たことがない。それに比べたらゲームバランスが崩れてますなんて、まだ調整可能な部分で済んで良かったねとすら思う。どこのゲームのストーリーが微妙だとは言いませんが。

再三になるが、本当にガワは良く出来ていると思うのだ。だからこそ勿体ない、と思う。なので今後のアップデートに期待していきたいなあ。頑張れヘブバン。

※2022.05.24追記:記事執筆以降に改善された部分を変更